気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Kerzoven開発、PC/Linux向けに5月16日にリリースされたコロニーシミュレーション『Of Life and Land』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、手付かずの自然が広がる王国の片隅で村人たちを導き平和な集落を築き上げるシミュレーションゲーム。資源の収集や加工など村人の生活には自然への影響がつきもの。自然を第一に考えるのか、バランスを探り自然と共存を目指すのか、あるいは生き物を滅亡に導いてでも発展を目指すのか、プレイヤーは選択を迫られることになります。日本語にも対応済み。
『Of Life and Land』は、2,800円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Marco こんにちは、本作の開発リーダー、Marco Burriです。私はスイスの片田舎で、自然や社会に関するゲームを小さなチームと一緒に開発しています。本作は2017年頃、私のパートタイムのソロプロジェクトとして始まりました。2022年、プロジェクトはより具体的になり、チームも大きくなり始めました。現在、4人が開発に取り組んでおり(ほとんどがパートタイム)、パートナーのMetarootがマーケティングとコミュニティ管理を担当し、2人のフリーランサーから時々サポートを受けています。
私は『Banished』『Anno』『Stardew Valley』『Factorio』といったゲームが大好きですが、『Deep Rock Galactic』『Baldurs Gate 3』『Crusader Kings II』『Gothic』のようなゲームも大好きです。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Marco 本作の特徴は、自然と社会を深くシミュレーションしていることです。人間や動物には、心理モデルに従って進化する欲求(食事、社交性、自己実現など)があり、それを中心に日々を構成しています。プレイヤーは水の循環、栄養素、動物の個体数など、環境を観察し、それらに影響を与えることができます。
もうひとつのクールな特徴は、異なるマップ/バイオームに複数の入植地を建設できることです。プレイヤーはそれらすべてを同時に管理し、それぞれの役割(採掘の町、農村、前哨基地など)に集中し、それらの間で品物を交換し、入植者を再配置することもできます。他の派閥も、プレイヤーと同じ仕組みで動く必要があります。それはつまり、彼らはアイテムやゴールドを自然と産み出さず、プレイヤーに売るアイテムを生産しなければなりませんし、より効率的にするために、プレイヤーが彼らに売る道具を使用しなければなりません。
シミュレーションという点では一歩進んでいるものの、それでも簡単に理解できるようなゲームをずっと作りたいと思っていました。自然界の複雑なプロセスや社会心理学のさまざまなモデルを読みながら、これらの理論をシミュレーションモデルで検証してみたいと思ったのです。それが可能で、他の人たちも非常に面白いと感じていることに気づいてから、これらのシステムを組み込んだゲームの開発に取りかかりました。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Marco はい、私は『Anno』シリーズが大好きですが、もっとエージェント・ベースのシミュレーションに拡張してほしいといつも思っていました。『Banished』は、それが可能であることを教えてくれた大きなインスピレーションでしたし、シミュレーションを観察して深く掘り下げるのが好きな人たちがいることも教えてくれました。もちろん、『Dwarf Fortress』はこの分野では伝説的な存在で、私が本作の開発に挑戦するきっかけとなりました。Tarn Adams氏(訳註:『Dwarf Fortress』の開発者)と話す機会を持てたのもとてもクールでした!また、複雑なシステムをプレイヤーに伝えるのは簡単なことではないが、フィードバックを何度も繰り返すことで、そこに到達できることも教えてくれました。
新しく追加されたレンツブルグのシナリオは、現実から着想を得ています。このシナリオではレンツブルグ伯爵家の歴史的な物語を描いています。レンツブルグ城は私がスイスで一番好きな城で、私が住んでいるところから15分ほどのところにあります。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Marco 私にとっては、生物学や社会科学の本や大学時代の講義で学んだ理論通りにモデルが動いているのを見ると、シミュレーションでも同じことが言えるのだと、いつも驚かされました。しかし、特に興味深かったのは、特定の部分が直接プログラムされていないにもかかわらず、追求してみると、それに関する直接的な原因が見つかることでした。
例えば、オオカミの狩猟と森や水路の健全性との間に関連性があることがシミュレーションで確認できました。オオカミの数が減ると、シカが増えすぎて(オオカミがその地域で唯一の自然捕食者である場合)、その地域でシカ1頭あたりが利用できる餌が減り、シカは樹皮や新芽を食べ、特に冬には小さな木をかじるようになります。これが森全体にダメージを与え、保水力を減らし、洪水を引き起こすのです。猟師や林業家は、現実にはそんなことはとっくに知っていることですが、直接プログラムされていなくても、シミュレーションから自然と同じような効果が出てくるのはすごいことだと思います。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Marco プレイヤーたちからは、本作は『Banished』の後継にふさわしいが、マクロ管理により重点を置いており、さまざまなバイオームを訪れたり、複数の入植地を建設したりといったクールな機能が追加されており、とても気に入っているとの感想が届いており、読むと本当にうれしくなります。何百時間も本作をプレイし、楽しんでいる人を見るといつも驚かされますね。
批評としては、本作が非常に複雑で、自分で多くのことを把握し、何が起きているのかを観察しなければならないので万人には向かないという声が届いています。本作は世界と自然や小さな社会における複雑なプロセスを探求することを意図しており、つながりを理解することに対する興味が必要ですが、私たちはプレイヤーが迷子にならないよう、より良いガイドを心がけており、多くのヘルプやシステムに関する情報、ヒントを追加したパッチをリリースしたばかりです。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Marco いただいたフィードバックやご質問のおかげで、どのような情報が不足しているのか、どのようにわかっていただけばいいのかがわかりました。最新のパッチでは、ゲーム内のさまざまなシステムに関する新しい情報をたくさん追加し、ガイドラインやヒントをさらに充実させ、よく寄せられる質問に対する例をWikiに追加しています。また、ゲームをより楽しく、より遊びやすくするために、プレイヤーから要望のあった新機能を多数実装しました。もちろん、報告された問題やクラッシュの修正も行っています。
私たちは、より多くのフィードバック、アイデア、機能要望を継続的に収集し、バグを修正し、どのような機能が面白いか、または(特定のQoL機能のように)不足しているかを確認し、ゲームにパッチを適用していきます。また、フィードバックはバランス調整の感覚をつかむのにも役立ちます。もっとバリエーションが欲しいというプレイヤーもいたので、音楽も追加する予定です。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Marco はい!YouTubeでBGMの問題が発生しないように、「配信者(ストリーマー)モード」を有効にしておいてください。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Marco 本作をプレイしていただき、そして応援していただきありがとうございます!日本のたくさんのプレイヤーに本作を遊んでいただき、本当に光栄です!
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に700を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。